安らかに生きるために、死んだふりをする 

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メルが私を起こしていた。
時計をみると、午前2時。
メルはなにかに怯えているようなのだ。
それは犬の聴覚には察知できても、人間の私には聞こえないものかもしれない。

まてよ、と思った。
もしかしたらメルのやつ、自分の想像に怯えているのかもしれない。

自分は、想像に怯えるのは、やめようと思っている。
といっても、ときどきそいつはやって来て、私を脅かすけれど、そういうときは、来たな、と構えて、そいつから離れることにしている。

ほんとうにそうなるのかもわからない想像に、今という現場を黒く塗りつぶしたくはないから。
眼をあければ花も咲いているし、朝になれば太陽だって昇るのだ。

そいつは、人のこころの隙間に入り込む、悪いやつなのだ。
そいつからの離れ方はかんたんだ。
死んだふりをするのだ。
要するに、なにも考えないことだ。

メルがしつこく私を起こしていた。
ベッドの横に衝立をおいてやった。もう鼻先で私をつつくことはできないだろう。
メルは私を起こすことに諦めて、そのうち、自分の布団にもどって、眠っていた。

そうだ、メル。
なにも考えず、寝りなさい。




宛先不明の荷 

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見知らぬ人から電話がかかってきた。
どうやら、間違い電話のようである。
1、2分して、またかかってきた。

「河原嶋うどんですが」
「あ、また間違ってしまったようです」
「どちらへ、おかけですか」
「うすいさん、という方なのですが・・・」
「あ、それ、私です」

昨日、姉へリンゴを送ったのだが、うっかりもいいところで、届け先の名前の欄を空白で出してしまったのだ。しかも、マンションの部屋番号も違っていた。
結局、リンゴは姉の部屋のお隣さんへ行ってしまっていた。荷は、宛先が空白でも動くのだ。

「宛先不明の荷」に思い当たることがあった。
自分も宛先不明の荷かもしれないからだ。いや、人間なんて、みんな宛先不明の荷ではないか。
どこへ行くかわからない。誰と出会うかもしれたものではない。でも、それを自分宛てと思って、積極的に動かなければ道は開かない。

メルママと調理師学校で席が隣になって、学期が変わって席替えをしたら、また隣になった。
それがきっかけで、お互いに連れ合いと死別していることを知ったのだ。
そのとき、メルママは神様からのプレゼントかもしれない、と自分は思った。
それこそが、大いなる思い込みかもしれないが、それから道が開いて、思いもよらなかったことを長野県の山奥でやっている。
思いこみ。いいじゃないか。
人生、当たって砕けちゃえ。





いつのまにか秋 

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滋賀県からの御一行9名様が帰っていかれました。
精算をすませたあと、河原嶋橋に集まっていたところをお察しすると、分杭峠からまわって来られたのでしょう。河原嶋橋は一部の人たちのあいだで、パワースポットのようにいわれていますが、自分はわかりません。

滋賀県から電話をかけてこられて、本日のセッティングをされた方は、今日で3度目のご来店。
その方は分杭峠のゼロ磁場に通って、脳こうそくが治ったと言っておられるのを、接客を担当しているメルママからききました。

不治と思われるような病をお持ちの方は、藁をもつかむものです。それは、その方のご家族もおなじです。病は家族ぐるみの戦いになります。

自分も連れ合いと死別しています。

病院は別れの場でもあります。
ひろい待合室の片隅で、泣いていた方を思いうかべます。

そしてまた、病院は人間の愛憎を知る場所でもありました。
亡くなった連れ合いと同じ病棟にいた女性も癌でした。
彼女の旦那さんも癌で、下の階の病室にいましたが、二人は互いに見舞いあっていたのでした。
癌の方が、癌の方を見舞う・・・
ただ黙って、よりそっていたふたり。

一方で、自分の連れ合いと同じ病棟にいた女性は、癌とわかって、旦那から一方的に離婚させられたと言っていました。
その女性も亡くなりました。
あのとき、病棟で出会った10数名の方は、みんな亡くなってしまいました。

藁をもつかむ気持ちで分杭にかよう気持ち、わかります。

川向うの風景はすっかり秋。
いつ、秋になたのか、わからないのですが、気がつくと、秋。
かすかな風が吹いただけで葉が散ります。

きょうもよい日のはじまり、はじまり。 

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今日は水曜日。
定休日ですが、店はやります。
滋賀県から、河原島へ食べに来たいとの電話があり、ご一行様9名が来店されるからです。

先週の日曜日は大鹿歌舞伎があって店は休業。
村は歌舞伎にかぎらず、催しものがると店は暇になるからです。
うどんを茹でる釜のガス代が、ばかになりません。そんなわけで、大鹿歌舞伎のある日は、河原嶋うどんは定休日の扱いです。

その、大鹿歌舞伎をはさんだ土、月曜日は、思いがけず店は大忙し。店のものはほとんど食べつくされた感があり、きのうは仕込みに追われていました。

河原嶋うどんは品数が多いので、準備はたいへんです。
うどんメニューのほかに、ご飯もの、生パスタ、それと人気者の厚焼き玉子もつくらなければなりません。
きのう来店された方が、今日も来られて、またウドンというのは気の毒に思って、ご飯ものを充実させました。生パスタも、その考えでメニューにいれました。

看板はウドン屋ですが、美味しいものはメニューに加えていきたい。

朝の河原嶋は雲のなか。
濃い霧が森の頭をなぞってゆっくりと流れています。
対岸の木々もすっかり紅葉して、秋ふかし・・・

なが~い禁漁 

カテゴリ:釣行記

禁漁期間にはいると、ぼんやりしてしまいます。
夕日をみると、川を思いだし、バッタをみると、やっぱり川を思い浮かべます。
今日は後かたずけが早く終わった、よし、釣りだ!
・・・そうだ、禁漁なんだ・・・
なんとなく河原嶋橋にいって、川を眺めて、帰ってきたりして。

釣りがしたいよな~。

きのう、車がやってきて、橋の上でとまりました。
さては禁漁破りか!
と見ていると、男が車からおりて、川を覗いて、帰ってゆきました。
分かる!
その気持ち、すごく分かる。

神奈川にいたころは、禁漁になるとホームグランドの丹沢へ行き、仲間と産卵床をつくっていました。
産卵床の造成は大変な肉体作業でした。
でも、好きでやっていることですから、みんな生きいきしていました。

産卵床が完成すると、ときどき川へ行って、自分たちが造った産卵床でヤマメが産卵をしているのかを確認します。

産卵床でヤマメがペアリングをしていたりすると大喜び。


要するに川が好きなんだ。
川にいたいから釣りをしたいんだな。
川にいると慰められるんだ。川に。

川の水さん、どんどん流れちゃってください。
雲がわけば、また水が落ちてきますから。
わたしゃ海へゆきます。