安らかに生きるために、死んだふりをする 

カテゴリ:相方Uさんの記事

メルが私を起こしていた。
時計をみると、午前2時。
メルはなにかに怯えているようなのだ。
それは犬の聴覚には察知できても、人間の私には聞こえないものかもしれない。

まてよ、と思った。
もしかしたらメルのやつ、自分の想像に怯えているのかもしれない。

自分は、想像に怯えるのは、やめようと思っている。
といっても、ときどきそいつはやって来て、私を脅かすけれど、そういうときは、来たな、と構えて、そいつから離れることにしている。

ほんとうにそうなるのかもわからない想像に、今という現場を黒く塗りつぶしたくはないから。
眼をあければ花も咲いているし、朝になれば太陽だって昇るのだ。

そいつは、人のこころの隙間に入り込む、悪いやつなのだ。
そいつからの離れ方はかんたんだ。
死んだふりをするのだ。
要するに、なにも考えないことだ。

メルがしつこく私を起こしていた。
ベッドの横に衝立をおいてやった。もう鼻先で私をつつくことはできないだろう。
メルは私を起こすことに諦めて、そのうち、自分の布団にもどって、眠っていた。

そうだ、メル。
なにも考えず、寝りなさい。




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