生きているということ 

カテゴリ:相方Uさんの記事

オフクロは俺のすすむべき道を死に顔にうつして、初めてだが、叱咤ではなく、激励してくれているような感じだった。
「これが現生でお会いできる姿の最後」
葬儀屋のアナウンスが流れる。ほどなく、棺に蓋がされるだろう。
それまで、この世の実相に反抗して、オフクロの死でさえ傍観を装いたい俺だったが、オフクロの頬に手をあてていた。

冷たい。

妻が死んだあと、俺を心配して、俺の家へ「思いきって来た」という母。
あの当時でさえ、ほとんど歩けなかった。
きっと、よちよちと歩いて来たに違いない。
その母の訪れで、開けた玄関の扉。凍てつく風が吹き込んだ。
扉をしめ、母の手を握った。
骨と皮ばかりの、筋張った手は、驚くほど冷たかった。
こんな手で、俺のことを心配してくれているのか。

「当たり前だ」
オフクロの声が聞こえた。
俺は、ひとりの人を幸せにできたら、もういい。
それまでは、頑張る。

オフクロが死んだ翌日は上天気。
俺もいい天気の日に死にたいものだ。

オフクロが死んだ日はよい日。
俺が死んだ日もよい日。
日々、是好日。
何事もなし。




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